元気のある振り、笑っている振りをして、嫌々で良いから仕事をしてみたら?/「やりがいのある仕事」という幻想

 

「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)

★★★★★(名著!)

 「やりがいのある仕事」という幻想

森博嗣

 

2013年に出版されましたが、いま読んでもまったく古さを感じることはありません。

むしろ「好きなことを仕事にしよう」ブームの昨今、好きなことを仕事にしたい気持ちと、現実の自分との差に悩みを抱えている人が多くいるはずの今だからこそ読んでほしい1冊です。

働くということ

そもそも、就職しなければならない、というのも幻想だ。人は働くために生まれてきたのではない。どちらかというと、働かない方が良い状態だ。働かない方が楽しいし、疲れないし、健康的だ。あらゆる面に置いて、働かない方が人間的だといえる。ただ、一点だけ、お金が稼げないという問題があるだけである。 

大学を卒業したら働かなければいけないと思っていた。もちろん頭では、働くことが唯一の道でないことは分かっている。それでも自分の選択肢として、就活をすること以外の道は見つからなかった。周りのみんなに合わせている方が楽だったから。

いまは働かなくて良いのであれば働きたくないと思っている。できるだけ自由でいたい。しかしお金が稼げないという問題がある。 

楽しい仕事という幻想

仕事でも同じことがいえる。見せかけの「楽しさ」や「やりがい」を作ってしまうから、現場で気づいた若い社員は、「こんなはずじゃなかった」と辞めていく。特に、この頃の若い人は、「好きでなければやらなくても良い」という絶対的な信念を持って育てられているから、辞める判断は早い。 

OBOG訪問などをすると、優しい先輩が仕事の楽しさを教えてくれる。社会は厳しいところだけど、こんなやりがいがあるよということを、高い倍率を勝ち抜いて大企業に就職したすごい人が生き生きと語る。

そんな「楽しさ」や「やりがい」に騙されて入社するから苦しむ。

仕方がないから楽しいと自己暗示をかける。たいして面白くないことに対して「楽しい」ふりをすることになる。

好きなことを仕事にする

生きていくのにお金は必要であるから、仕事をしてお金を稼ぐ必要がある(それがヒモという仕事であれ)。だから、1日のうち大きな時間を占める仕事が好きなことになればQOLは上がる。

そこで、どうすれば好きなことを仕事にできるかという悩みが生まれる。だが、そういう質問をする人はそこまで好きなことがないのだと思う。もちろん心底好きなことをどうマネタイズするか悩んでいる人もいるけれど。

 好きなことの見つけ方

繰り返していうが、人生のやりがい、人生の楽しみというものは、人から与えられるものではない。どこかに既にあるものでもない。自分で作るもの、育てるものだ。

いま好きなことがない人は、とりあえず「イエスマン "YES"は人生のパスワード (字幕版)」を見てほしい。

こんな風に何かを勧められたら、とにかく行動を起こすと良い。

この映画のように様々な行動を取れば、好きなことが見つかるだろう。

マネタイズを考えるのはそれからだ。 

仕事が辛いあなたへ

「元気なんか無理に出さなくても良いから、ちょっと元気のあるふりをして、ちょっと笑っている振りをして、嫌々でも良いから仕事をしてみたら?それで金を稼いで、あとでその金を好きなことに使えば良い。それが君の人生かも」と言ったら、身も蓋もないだろうか。

「好きな事を仕事に」と言われることで、辛い思いをしているあなたに読んでほしい。今を肯定できないあなたに読んでほしい。

おわりに

森博嗣の言葉にはある種の「あたたかさ」がないが、励まされる。今まで彼の文章は小説をいくつか読んだだけでエッセイを読んだことはなかった。

本書から感じられる「理系」っぽい語り口が気持ちよく、一気に彼のファンになった。  

「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)

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