【映画感想】シェアファミリーのすすめ「万引き家族」

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日本人として21年ぶりにパルムドールを受賞した是枝監督の「万引き家族」を観てきました。

是枝監督の作品は、「そして父になる」と「海街diary」を観たことがあって、どちらも空気感が大好きでした。リリー・フランキー感とも言い換えられます。

今回の「万引き家族」もリリー・フランキー感をしっかりと味わえ、絶妙な間と笑いとドスンとくるセリフによって、のんびりとした映画に見せかけて飽きる瞬間がありませんでした。

「万引き家族」は観終わったあとに誰かと語り合いたくなる作品です。

とにかくおすすめですので、劇場で観てからまたこの記事に戻ってきてください。

 

ここからはネタバレを気にせず感想を書いていきますよー。

※あえて登場人物はすべて役者さんの名前(敬称略)で書きます。

血が繋がっていない脆い家族

「万引き家族」の家族構成はこうなっています。

おばあちゃん:樹木希林

父:リリー・フランキー

母:安藤サクラ

長女:松岡茉優 

長男:城桧吏

次女:佐々木みゆ

3世代3人兄弟の6人家族です。

 

みんなで隅田川の花火の音を縁側で楽しんだり、海でジャンプして遊んだりしている様子を見たら、誰も彼らが「本当の」家族でないとは思わないでしょう。

貧乏だけど幸せ。そんな家族を体現しているようでした。

しかし、彼らは普通の家族ではありません。

民生員が来ると、いつも通りと言わんばかりの慣れた手付きで焦ること無くこっそり裏口から家を出る城桧吏と佐々木みゆ。

松岡茉優は、樹木希林から旦那を奪った女性の孫だし、城桧吏はリリー・フランキーと安藤サクラがパチンコ屋から連れてきた子だし、佐々木みゆもリリー・フランキーに連れられて来た子です。

制度上は、一切守られていない家族です。

 

この脆さは城桧吏が万引きして店員から逃げる途中で骨折したことをきっかけに現れます。

施設に入居する城桧吏、本当の両親の元に戻される佐々木みゆ。

佐々木みゆについては、「万引き家族」に住んでいたときの方が幸せだったと断言できます。

本当の父親は母親に暴力を振るい、母親は佐々木みゆに暴力を振るいます。

あの、洋服を買ってあげるくだりの猫なで声はゾッとしました。

ところが「万引き家族」では愛情を感じることができました。

優しさから殴ることはなくて、大好きだったらこうするんだよと言って、安藤サクラが佐々木みゆを後ろから抱きしめたシーンはかなりぐっときました。

自分も親から愛されていなかったであろう安藤サクラだからこそ、佐々木みゆの辛さが心底分かったのでしょう。

 

制度として守られていない家族がいかに脆いかを実感しました。

以前、渋谷区で同性カップルへのパートナーシップ証明書を交付するというニュースがありましたが、制度として繋がりを証明することがここまで大切だったとは

 

離れ離れになった家族が、心のどこかで繋がりあっている様子も描かれていました。

城桧吏はリリー・フランキーの風呂が綺麗な新居に泊まってき、

松岡茉優はかつて「万引き家族」で住んでいた家を訪れ、

佐々木みゆはビーダマ遊びをしながら、樹木希林と歌った数え歌を口ずさみます。

 

どれだけ脆くても彼らは紛れもなく家族だったんだなーと思いました。 

万引きせざるを得ない貧困

「万引き家族」とタイトルにあるように、彼らは日常的に万引きをします。

映画の冒頭ではリリー・フランキーと城桧吏が2人で万引きをするシーンが、オーシャンズ11みたいなチームクライムものを観ているようでした。

まあ実際にチームでクライムなんですけどね。

ドキドキするけど、あまりのプロっぽさにある意味安心して万引きの成功を観ていられました。

言葉を交わさずに手のシグナルだけで会話をしたり、完璧なタイミングで店員からの死角を作るように動いたり。

2人以外にも、安藤サクラはクリーニング屋で働きながら、お客さんのポケットに入っているものを盗んだり、樹木希林はパチンコ屋で玉を盗んだり(盗んだあとの表情が愛らしい!)、佐々木みゆもお兄ちゃんと協力して釣り竿を盗んだりします。

 

彼らが犯罪者であることが、この映画をすっきり観させてくれない素晴らしい要因になっています。

虐待はいけない!リリー・フランキーたちが正義だ!そんな風には言い切れ無いんです。

リリー・フランキーが警察に、教えられることは万引きくらいしかなかったと言います。

お金も学も無いため、佐々木みゆにとって愛情を感じられる「万引き家族」に住んでいた方が良かったのか分からなくなってきます。

 

では、なぜ彼らが日常的に万引きをせざるを得ないのか。

それは、貧困が引き起こしたのかもしれません。

 

僕は最近まで貧困については比較的自己責任論者でした。

努力すればどうにかなるって思っていたんです。

大学だって優秀なら返還の必要がない奨学金がもらえるし、スマホですぐになんでも調べられるし。

でも、「最貧困女子」を読んで、本人の努力だけではどうにもならない環境にいる人々のことを知りました。

www.fujiwarayoshito.com

たとえスマホを持っていても、行政で生活保護の手続きができない程度のリテラシーしかない人もいることを知って、驚きました。

識字率と文の内容を理解することには、かなりの乖離があるのかもしれません。

 

だからこそ、「万引き家族」をつくったのは貧困という環境であると思いたい。

もう彼らに思い入れがあるためフラットな視点では語れませんが、ベーシックインカムがあれば、万引きに手を染めることもなかったのかなーと思いました。

シェアファミリーのすすめ

シェアが進む現在、僕も所有しているモノはかなり少ない方だと思います。

だいたいシェアで成り立っています。

ただ、さすがに家族をシェアする感覚はなかったのですが、「万引き家族」を観てそれもいいかなと思いました。

血縁関係にはないけど1つ屋根のしたに住み、夕食を共にする。

必要以上に相手のことを知らないし、人を所有しようとしない。

そんなゆるいのに気持ちが繋がった人間関係に羨ましさを感じました。

 

なんとなく気の合う人が1つの家に住み、みんなで育児をしながら、互いに期待しすぎずに暮らす未来は案外遠くない気がします。

なんならすでにシェアハウスではそのような状況が生まれているところもあるでしょう。

ただ、ある程度シェアハウスには同世代が集まりやすいので、「万引き家族」のように3世代3人兄弟とはいかないと思います。

 

そこで、おばあちゃん家シェアハウスをするのがおもしろそうだなと思いました。

1人になってしまったおばあちゃんの家に、3世代くらいの数人が一緒に住むんです。

かなりいいかも。

おわりに

まだまだ全然頭のなかでまとまらないくらい、考えさせられることが多い映画でした。

今回は家族という観点で書きましたが、「万引き家族」の関係性に関するミステリーも解明したいし、万引きの手口についても話たいし、まだまだ書けそうです。

あー、感想言い合いたい!

暑さにイラつく夏の始めにおすすめです!

 

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