スリの入門書としておすすめ。中村文則「掏摸」
フジワラヨシトです。
本日は中村文則8作目の「掏摸」(スリ)を紹介します。
本書は紙の本で買ったので、お気にりのPost-Itをお供に読みました。
紙の本を読むときは、このPost-Itが欠かせない。 pic.twitter.com/qr8sxdQmNp
— フジワラヨシト (@FujiwaraYoshit0) 2017年12月5日
さて、僕が中村文則を知ったのはいつかのアメトーク読書芸人で、又吉が「教団X 」を紹介していた時です。
これが、かなり分厚い本ですが、途中で読むことを辞められないくらいおもしろく、きになる作家になりました。その後、「私の消滅」「R帝国」と読み、「掏摸」に至ります。
「R帝国」については先日感想を書きました。
読後の感想として、はじまりの2段落がよかったです。
最初に読んだときは、何のことか分からず、ミスリードしていました。
まだ僕が小さかった頃、行為の途中、よく失敗をした。
混んでいる店内や、他人の家で、密かに手につかんだものをよく落とした。他人のものは、僕の手の中で、馴染むことのない異物としてあった。本来ふれるべきでない接点が、僕を拒否するように、異物は微かに震え、独立を主張し、(後略)
ほんとはもっと読んで欲しいんですが、長くなるのでここまで。
最後まで読んだ後にもう一度読むと、本書の内容が詰まっていることが分かります。
主人公はスリ師なので、スリをするシーンは何度も出てきます。
スリを行なっている最中の描写があまりにも臨場感たっぷりで細かすぎて、筆者の経験を元にしているのではと思えるほどです。
本書を読み終わる頃には、財布の1個や2個は簡単にとれそうです。
狙うのはお金持ちだけにします。
人間の神経は大小の刺激を同時に感じると、小さい刺激をおろそかにする。
また、このようなスリに役立つ情報を得ることができます。
他にも、「R帝国」にも共通するような、「大きな何か」と「流れに逆らえない個人」という構造を楽しむこともできました。
これは、旧約聖書の物語の構造を意識しているそうです。
とてもシンプルだけど、世界の本質的な構造です。
反社会的な追体験をしながら、一切だれることなくあっという間に読み終わってしまいました。
スリの入門書としておすすめです。
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