小説の世界に浸かることの楽しさを教えてくれた。江國香織「なかなか暮れない夏の夕暮れ」

フジワラヨシトです。

新年1冊目は、僕が大好きな小説を紹介します。僕は本棚を持たず、無印良品の箱に本を入れています。入らない本は処分するため、箱に入ろうと日夜熾烈な競争が行われています。そんな競争を勝ち抜き本箱に入っている小説が、江國香織の「なかなか暮れない夏の夕暮れ」(http://amzn.to/2lGuIPM)です。

江國さんの小説は、あくまで日常だけど、そこに潜む「変なこと」を描くことが上手です。また、男性に対する記述は、とても痛烈で言い返せないことともあるので、ドキっとします。

さて、この本のAmazonの内容紹介はこちら。

「人生」と「読書」が織りなす幸福なとき。

本ばかり読んでいる稔、姉の雀、元恋人の渚、
娘の波十、友だちの大竹と淳子……
切実で愛しい小さな冒険の日々と
頁をめくる官能を描き切る、待望の長篇小説。

ページをめくる官能なんて言われたら、読書好きは読みたくてたまらなくなるはずです。

あらすじ

50歳の稔は、独身で親の遺産で暮らす読書好きです。登場人物は他に、ドイツと日本を行き来する姉、顧問税理士の友達、ソフトクリーム屋の従業員、稔と同級生の女性などがいます。彼らの日常がところどころで交わり合うことで、物語が生まれます。

みんな個人的な悩みや問題を抱えて、振り回されながら生きています。稔を除いて。もちろん稔にもそれなりの悩みはあるんですが、周囲の人間と比べて達観しているように感じられます。

すごく優しいけど、誰も縛らず誰にも縛られないんです。

 

感想

★★★★★

本書の中には稔が読んでいる2冊の小説が挿入されているので、一緒に小説を読む体験をすることができます。

稔は、小説の世界に浸るあまり、本を閉じても小説内の出来事を引きずっていたりします。また、眠くなって同じ行を何度読んだりもします。稔が小説に出てきた料理を真似して作るシーンはすごく楽しいです。

僕も稔が小説を愉しむようにして、この小説を愉しむことができました。何度も読みたくなる、美しく少し寂しい夏の夕暮れのような小説です。

本書は僕に、小説の世界にどっぷりと浸ることの楽しさを、僕に教えてくれました。

なかなか暮れない夏の夕暮れ

なかなか暮れない夏の夕暮れ