【読書感想】銀行口座を作ることもままならないという現実「最貧困女子」
今日は鈴木大介さんの「最貧困女子 」を読んだ。
本書は、セックスワークで生活せざるを得ない、最貧困の女性たちの様子を丹念な取材を元に書かれている。
著者は、「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心として取材活動を続けるルポライターである鈴木大介さんだ。
彼によると貧困に陥る原因として、低所得の他に「3つの無縁」と「3つの障害」があるという。
3つの無縁とは、「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」のことだ。
家族の無縁とは、いざというときに頼れる家族や親戚がいないことだ。
もし何らかの事情で自分が職を失ったとしても、実家に帰る選択肢がある人は、衣食住を確保しながら次の職探しをすることができる。
ところが、家族の無縁に陥った人は職を失い収入が無くなった人は、条件の悪い仕事だろうがとりあえずその日の食事、その月の家賃を払うために働くことになる。
映画「東京難民」でも、ある大学生が親に頼れなくなったところからホームレスへと落ちていった。
この映画はNetflixで観れるので、貧困やホームレスに興味がある人に観てほしい。
ホームレスというのが他人事でないと実感できるだろう。
次に、地域の無縁とは、頼れる友達がいないことだ。
橘玲さんの「幸福の「資本」論」で語られる社会資本のことだ。
たとえ金融資産が無くても、なんとか200万円程度稼いで友達がいるだけで、幸せに暮らすことができる。
マイルドヤンキーと呼ばれる層のことだ。
本書の中でも、低収入で、食費は切り詰め、服は安い古着で、車はぼろぼろの女性が登場するが、仲間と一緒の生活レベルでそれなりに楽しんでいるため、貧乏であることに悲観的でなかったりする。
そして、制度の無縁とは生活保護などのセーフティネットにひっかからないということだ。
原因は様々だが、本書には行政の書く堅い文章が理解できないという女性がいた。
彼女はことごとく手続きが苦手で、銀行で口座をつくることすらままならないという。
生活保護を受けるのにも手続きが必要で、ここを超えなければセーフティネットにひっかかることができない。
本書を読むまでこのような現実を知らなかったため、貧困の奥深さを垣間見た瞬間だった。
ちなみに生活保護について知りたい人へは、「健康で文化的な最低限度の生活 1」という漫画が全力でおすすめだ。
3つの障害は「精神障害・発達障害・知的障害」のことだ。
これらの障害を持つことで、上の3つの無縁につながりやすくなる。
本書に登場するある女性は、普段はニコニコしていて大人しいが、気に触ることがあると暴力的な行為に走ってしまう。
このような性格だと、なかなか友達の輪にも混ざりにくいだろう。
自分から3つの無縁を呼び寄せていしまいやすい属性になってしまう。
本書の様々な最貧困女子の事例は、あまりにも衝撃的だった。
普段関わることがなく、(目を背けていただけかもしれないが)見たこともない貧困が、意外と間近に存在することに驚いた。
そしてそれは想像よりも、ずっと深い貧困のスパイラルに落ちていっていた。
見て見ぬふりをしない世の中にするためには、自分たちに何ができるのか。
まずは本書を通じて彼女たちの叫びに耳を傾けて欲しい。
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