【読書感想】夢を叶える、人生を楽しむ「最後の授業 ぼくの命があるうちに」
夢のリスト
大学生のときに、偶然図書館で目についた「人生の100のリスト」という本を読んだ。内容はうるおぼえだけれど、夢中になって自分のやりたいことを100個をルーズリーフに書き出したことは覚えている。やりたいことを100個書き出すなんて簡単そうだけど、やってみると数十個書いた時点でペンが止まる。
なんとなくそれっぽいことなら書ける。バンジージャンプするとか、世界一周するとか。(バンジージャンプは竜神バンジーに挑戦できた。)
でも、それって本当にやりたいことなのか考えてみると、よく分からなくなってくる。本当にやりたいと思っていないことは具体性が無い。わくわくしない。
100個も書く必要はないけれど、夢のリストはあるといい。今、まさにやっていることの先が見える。夢に繋がっているのか否か。こんな意識をするようになるだけでも、夢への近づき方は変わってくるだろう。
「最後の授業 ぼくの命があるうちに」の著者であるランディ・パウシュは膵臓がんからの合併症により47歳で亡くなった。3人の子供と妻を残して。
彼は人生を楽しむ天才で、夢を叶える天才だった。47年の人生の中で子供の頃からの夢をいくつも叶えてきた。人生の終わりは年数にすると早かったけれど、濃密で幸福であったことが本書からは読み取れる。もちろんがんになり苦悩しただろう。でも、彼が「最後の授業」で語ったことはいかに人生を楽しみ、夢を叶えてきたかだった。
そんな彼の子供の頃からの夢はこれだ。
・無重力を体験する
・NFLでプレーする
・ワールドブック百科事典を執筆する
・カーク船長になる
・ぬいぐるみを勝ち取る
・ディズニーのイマジニアになる
ぱっと読んでも「ぬいぐるみを勝ち取る」とか内容がつかめないものもあるけど、彼はこのリスト1つ1つを叶えてきた。あるいは夢を目指す過程で学びを得た。
あなたの夢のリストはありますか?
夢を因数分解する
夢を書き出したら、あとはそれに向かって努力するだけ。とてもシンプルなこと。
ただ、「世界一周する」という夢を書いたとしても、いったいどうしたらいいのか分からない。ということで、夢を細分化してみよう。夢を因数分解するとも言えるし、こっちの表現の方がなんとなく賢そうで気に入っている。
世界一周して何がしたいのか。各国の料理を食べたいとしたら、どの国に立ち寄りたいか。どういった経路か。交通手段はどうするか。いくら必要なのか。時間はどれくらいかかるのか。こういったことを調べた上で、大きな夢を細かいステップに分ける。
例えばこんな感じ。
Step1 〇〇円貯める
Step2 必要なビザを取得する
Step3 休職届けを出す
このStepをさらに細分化するのも良い。とにかく今日なにか行動を起こせるように細かくする。そうすれば、毎日着実に1歩1歩夢に近づくことができる。千里の道の1歩からというわけだ。
近道を探す人はたくさんいる。僕は、最高の近道は長い道のりであることを知っている。一生懸命にやる、それだけだ。
ランディ・パウシュ「最後の授業 ぼくの命があるうちに (SB文庫)」より引用
あとは一生懸命にやるだけ。
夢の因数分解をしても、全容が見えないうちにやっていることが多く、何歩か進んでから少し逸れてきていることに気づくかもしれない。そしたらまた因数分解をやりなおす。夢までの地図を書き直す。何度も何度もやるしかない。一生懸命やるしかない。
こんなにやれやれ言われたら、やる気を失う人もいるかもしれない。人生もっと気楽に楽しもうよと。でも、夢を追いかけることは楽しいし、叶えることができたらもっと楽しい。しかも、ランディ・パウシュは同僚に「今日この日を、この瞬間を楽しんでいるお手本のような人だわ」と言わせるほど、今を楽しむ天才でもあった。
レンガの壁
夢を叶える過程では、かなり絶望的な状況におちいることもある。
ランディ・パウシュの「無重力を体験する」という夢がかなり近づいたことがあった。彼は大学教授で、ゼミでNASAのコンクールに優勝し、無重力を体験できることになった。しかし、ただし書きに「同伴する教授を除く」と書かれていた。これが、かなり夢の実現が絶望的なレンガの壁の例だ。しっかりと教授は駄目と書かれてしまったら、諦めるしかないように思う。
でも、ランディ・パウシュは諦めなかった。規定の書類を隅々まで読み込み、NASAが同伴を許可していた記者として申請し直したのだ。無重力を体験するための見え透いたやり方であるとNASAの職員にも指摘されたが、そんなことはお構い無しで、実際に体験したことをニュース記事サイトに寄稿することで決着が着いた。
夢を目の前にして簡単に諦めるわけにはいかなかったのだ。
レンガの壁がそこにあるのには、理由がある。
僕の行く手を阻むためにあるのではない。
その壁の向こうにある「何か」を
どれほど真剣に望んでいるか、
証明するチャンスを与えているのだ。
ランディ・パウシュ「最後の授業 ぼくの命があるうちに (SB文庫)」より引用
このレンガの壁が、本当にその夢を叶えたい人とそうでない人をスクリーニングする役割を果たしている。本当にやりたいことでなければ、人間は脳の中でいくらでも言い訳を自動生成してくれる。お金がないし、時間がないし、出会いもない。
このように、ときにはレンガの壁を超えなければ夢を叶えることはできない。超えるためにできそうなことは片っ端から試して、真剣にその「何か」を望んでいることを証明しなければいけない。これはチャンスだ。
最後の授業
バーチャルリアリティの第一人者でもあったランディ・パウシュは「最後の授業」を行った。これは同様のタイトルで教授が講義をするシリーズであったが、彼にとっては本当に「最後の授業」となった。
最後に残したかったメッセージは、夢を叶えること、人生を楽しむこと、そして3人の子供と妻への惜しみない愛情だった。
この「最後の講義」はYouTubeでも公開されているのでぜひ観て欲しい。また、本書は講義の後に書かれたもので、講義の記録としても「つづき」としても楽しめる。どうか最後まで人生を楽しむことを諦めなかった彼の言葉に耳を傾けて欲しい。